潔い圏外の先にあった本当に欲しいもの— モンゴルで見つけたゆっくり流れる時間
2025/12/08 文・zuzu
友人に誘われ、浮遊するようにモンゴルへ。
不便も圏外も受け入れた先に見つけた、モンゴルってこんな場所で、こんな旅ができる、その模様をご紹介します。
実は片道6時間(帰りは4時間半!)な場所
飛行機が高度を落としはじめた頃、窓の外に広がった景色に思わず声が漏れました。果てしない草原、白いゲル、そして地平線。写真で見たそのままのモンゴルが眼下に。
空港を抜けたとき、最初に感じたのは土の香り。湿気のない乾いた匂いが鼻先を通り抜け、東京の空気とはまったく違う世界へ来たことを教えてくれた。そして車移動がスタート。
舗装された道路はあっという間に終わり、そこから先は「これ、走ってええん?」と不安になるほどのダート。エクストリームな旅の前奏がそこから始まっていた。
曇りの夜空のもとで感じた本当の暗闇
初日は時折星空が顔を出しながらも雲も多めの夜。そこで触れたのは“本当の暗闇”。かろうじて宿の光がある中でもその暗さはなかなか怖いと感じるものでもあり。一方で、星が出たらどんなに綺麗なのか、そんな想像が広がる一夜でありました。
その日は疲れていたこともあって早々に就寝。そうです、あのゲルに。
潔い圏外と、スローダウンする時間
翌日は、バスに揺られて約5時間。到着した先で迎えたのは「LINEの通知だけ来て、中身は開けない」という圏外。
そこで気づいたことは、スマホを手放せば、時間はちゃんとゆっくり流れるということ。
この数年、1年があまりにも早く過ぎてしまうと感じていたけれど、もしかしたら自分の時間をテクノロジーに明け渡しすぎていただけなのかもしれません。
スライドするだけで際限なく流れてくるコンテンツは、ときに中毒のように時間を奪っていく。でも圏外になったことでスマホを手放し外の景色やその場の空気感を十分楽しむことができました。
なんだか“自分の時間”というものを、取り戻せた気がします。
馬の背で知った、飛ぶような感覚
メインアクティビティは乗馬。現地の方にレクチャーされたのは極めてシンプルで、「止まる」「進む」「右」「左」。
最初は散歩のようなペースでも、馬の揺れは想像よりずっと身体の芯に響いてくる。慣れない乗馬で足腰がすぐにキシキシ言い始めたけれども、モンゴルの景色と馬の体温と鼓動が伝わってくる時間はひたすらに愛おしく。
往復2時間。でも感覚では4時間くらいに感じる濃度でした。東京での1年がスピードで流れていくのに対し、ここでは1時間がゆったりと広がる。時間には伸び縮みがありました。
乗馬は次の日も。
この日は爆走の日。お散歩モードから一転、まるで自分が飛んでいるかのような走り方で。この感覚、いまも虜です……!
不便と星空がくれた、大きな祈り
乗馬から戻って入ったシャワーは、お湯が出るかどうかが運まかせ。熱湯が出たり、ちょろちょろだったり、まともな“入浴”とは言いがたい。ですが、それさえ旅の一部として楽しめてしまう不思議さがありました。振り返れば、それをネタに楽しめる友人同士で旅に来ていたから、なのかもしれません。
そして夜。夜空はクリアになって、初日よりも鮮明に星が見えた。
その光景を前に、日頃感じる欲望も、焦りも、承認欲求なんかもどこか遠い存在に感じて。星に願いを、なんていう言葉がありますが、欲望を忘れて祈ったのは「また、この星空を見られますように」という激しくピュアなものでした。
東京に戻っても、旅の時間は続いていた。
帰国後、Instagramのおすすめが馬で埋まっていました。アルゴリズムにまで伝わるほど、私はあの体験に心を奪われていた。
乾いた香り、揺れる馬の背、圧倒的な星空、潔い圏外、そしてゆっくり流れる時間。どれも東京にはないものばかり……。
なんて思う一方で、東京でも見上げれば星が見えることもある(今週はオリオン座の観測に成功した)。
スマホを手放してぼんやりする時間は東京でもつくれる。
またモンゴルに戻りたいと思いつつ、あの場所で過ごした時間のように、自分自身の手で自分の時間を少しずつ取り戻していきたい、そんな欲望を感じた旅でありました。
ほんの少しだけエクストリームな、モンゴル旅事情
最後に、私が現地で見てきたモンゴルのリアルを紹介します。
食事事情
我々がお邪魔したのは観光客向けの宿。食事も観光客、日本人に合わせられているのか、いただいたご飯は全部おいしかった……!
ラム肉をメインに煮込み料理が多いラインナップでした。中国とロシアカルチャーがミックスされているような料理は、日本人なら大好きなテイストだと思います(お酒も進む)。
トイレ事情
トイレットペーパーは流せません。用を足した後は、ゴミ箱に入れ、水を流す、そんなつくりです。私たちが宿泊した地方も、ウランバートルも同様。
お風呂事情
場所にもよるとは思いますが、水が使える・使えない、お湯が出る・出ない、は完全に運でした。夏場も涼しいので、いざとなれば体を拭くシートを持っていればなんとかなります。
言葉事情
ガイドさんが通訳をしてくれましたが、地方の現地の方は基本英語が通じず、私は関西弁で乗り切りました(意外と通じました)。ウランバートルなど、都会の方であれば英語も比較的通じる印象(関西弁でもいけました)。
ドライバーのおっちゃん。5時間の運転と細やかなことに気を使ってくれる温かく頼りになる方でした。また会いたい。
Photo:
高澤けーすけ、TASK WATANABE

