アジア最大級!自然・アート・音楽・ウェルネスが交差する、タイ・パタヤのカルチャーフェス「Wonderfruit」—その全貌とは?【体験レポ】

2025/12/21 文・Meadow編集部

「Wonderfruit(ワンダーフルーツ)」は、タイ・パタヤで毎年12月に開催されるアジア最大級のカルチャーフェスティバル。2014年にスタートしたこの野外フェスは、“アジアのバーニングマン”とも称され、4日間にわたりアート・カルチャー・音楽・ウェルネスなどを軸にした多彩なプログラムが展開される。

地元タイのみならず、世界各地からこの週末を目掛けて人々が集まる、いま注目のフェスのひとつ。2025年12月、この特別な世界を体験した編集部がその様子をレポートする。


今年で10周年。進化を続ける「Wonderfruit」

「24時間以内に申し込みを」と、同行者から送られてきたリンクを開くと、刻々と進むカウントダウンとともにチケットの予約を促すページが現れた。9月・10月・11月に数日間だけ行われる先行販売では、早ければ早いほど、お得にチケットを購入できるという仕組みになっている。筆者が予約リンクを開いたのは、その先行販売の締め切りまで残り24時間というタイミングだった。

チケットは5日間フルで楽しめる「5-Day Full Pass」や週末限定の「Weekend Pass」をはじめ、日曜日限定の「Sunday Pass」、20〜24歳向けの「Youth Pass」、5%ディスカウント付きの「Family Pass」など多彩なラインナップが用意されている。当日パスもあり、少し価格は上がるものの、飛び入り参加も可能だ。


会場は、パタヤの中心地から車で30分ほど。「The Fields at Siam Country Club」というゴルフ場跡地の広大な土地を活用し、エリア一帯に30を超える大小さまざまなベニューが点在する。ここは、単なるフェス会場ではなく、フェスのない時期は森を植え、土を再生し、空間をアップデートし続ける“年間を通じた文化実験の場”。一時的な舞台ではなく、自然と文化がともに共存するフィールドとして設計されている。

10周年記念となった今年は、10年を意味する“Decade”を冠した「A Decade of Wonder」がテーマとして掲げられ、フェスの10年の歩みを振り返りながら、これからの時代へとつながる文化・体験・交流を再発見し、深めていく機会として位置づけられた。

そのテーマに呼応するように、クリエイターやアーティスト、シェフ、そして多様なコミュニティが世界中から集結する。ステージやインスタレーション、ワークショップ、フード体験まで、あらゆるプログラムがひとつの街のようにデザインされ、参加者は敷地を巡りながら、自然とその世界の中に引き込まれていく。


徹底したサステナビリティへの挑戦

「Wonderfruit」が世界的に注目される理由のひとつが、その思想レベルで貫かれたサステナブル設計だ。会場である「The Fields at Siam Country Club」では、廃棄物のリサイクルや再利用、堆肥化といった取り組みを徹底するだけでなく、“無駄を出したうえで処理する”のではなく、“最初から無駄を生まない”ことに重きが置かれている。

象徴的なのが、使い捨てカップの全面禁止。参加者はマイカップを持参するか、会場で販売されるリユーザブルカップを購入する仕組みとなっている。さらに、会場内の造形物の多くは竹などの自然に還る素材やアップサイクル素材を用いて制作。トイレには手を拭くペーパーナプキンではなく布製ハンドタオルが採用されるなど、細部に至るまで一貫した姿勢が徹底されている。

“Wondercup”と呼ばれるオリジナルカップは、農業廃棄物であるライスハスクやココナッツハスクを使用。カップは旅の土産に持ち帰ることも。

ここではサステナビリティが単なるコンセプトにとどまらず、空間全体を成立させる前提条件として息づき、文化を支える基盤となっている。


ウェルネスが息づく、フェス体験

「Wonderfruit」のもうひとつの特徴といえば、ウェルネスプログラムの充実ぶり。会場では、世界各国から招かれたインストラクターによるヨガや瞑想、呼吸法のクラスをはじめ、サウンドヒーリングやムーブメントワークなど、心身を整える多様なセッションが随所で行われている。

音楽ステージの近くには、ヨガやサウンドワークのパビリオンが並び、踊る人とくつろぐ人が、同じ空間の中で自然に共存している。静かに内側と向き合う時間もあれば、音に身を委ねて解放される瞬間もある。

「Wonderfruit」の空間構成やプログラムから浮かび上がるのは、人が心と身体、そして自然との関係性を取り戻すことそのものが、ウェルネスであるという考え方。そうしたウェルネスのあり方を、フェスという体験を通じて立体的に感じられる構成になっている。


「Wonderfruit」の体験は、ここから始まる

「Wonderfruit」の思想を理解したところで、当日を迎えるまでの流れと、現地の様子を紹介しよう。

まず、開催が近づくと専用アプリが役に立つ。期間中のプログラムや出演アーティストのスケジュールを一覧で見ることができ、気になるものはワンタップで「My Program」に保存し、自分だけのタイムテーブルをつくることができる。人気のプログラムは事前予約で早々に埋まってしまうこともあるので、こまめなチェックが鍵。スケジュールさえ組んでおけば、あとはそのリストに沿って会場を巡るだけで、一日をとことん楽しめる。 


当日は、会場に着いたらまず受付でチケットと引き換えにリストバンドを受け取り、セキュリティチェックを抜けていよいよ入場。会場内の支払いはすべてキャッシュレスで、「TOP UP」と書かれたチャージスポットでリストバンドに金額を追加して使う仕組みだ。

チャージは2,000バーツ(約10,000円)以上・返金不可のため少し注意が必要だが、クレジットカードからその場ですぐチャージできるので、現金を持ち歩く手間がないのは嬉しいポイント。

ちなみに、同行者Tは最終日後半に4,000バーツ以上残っていることが発覚し、ラストスパートでドリンクや食事を追加することに。そんなハプニングも含めて、フェスならではの楽しみ方と言える。 

それから、ひとつ補足しておきたいのが、会場までの移動について。期間中、とくに夕方から夜にかけてはGrabやタクシーが捕まりにくくなる時間帯もある。行き帰りをスムーズにしたい場合は、事前にハイヤーや送迎車を手配しておくのもひとつの選択肢。


 食、ウェルネス、クリエイション。「Wonderfruit」を歩いて見えた景色

次に、気になるグルメ事情について。会場にはエリアごとにフードコーナーが点在。そのラインナップの幅広さは、目移りしてしまうほど。人気レストランのPOP-UPから、ガパオ、チキンライス、バーガー、ピザ、カレーまで、多国籍な料理がずらり。どれもフェス飯の想像を軽々と超えるクオリティで、あれもこれもと手を伸ばしたくなってしまう。

フードブースのまわりには、木や藁でできたテーブルや椅子が配置されている。混雑する時間帯でも十分に数が確保され、席難民にならないのが嬉しいところ。音楽と会話が混ざり合う空気の中、ゆっくり食事を楽しめる環境が整っている。


そして、多くの人が密かに感動するのがトイレの清潔さ。常に清掃が行き届き、フェスにありがちなストレスがここにはない。長時間の滞在でも快適でいられる理由は、こうした細部まで丁寧に配慮されているからだろう。

会場内にはほかにも、タイ式マッサージ、点滴スポット、静かに休めるレストエリアなど、身体を整えるための設備が充実。フェスであると同時に、ウェルネスのフィールドでもあることを、歩くたびに実感する。

そして見逃せないのが、フィールド全体に広がるクリエイティブな造形だ。ダイナミックなステージやブースから、個性的なインスタレーションまで、多彩な表現が空間全体を彩っている。日中は素材の質感やフォルムが際立ち、夜は照明によってまるでアート作品のような迫力を放つ。時間帯によってまったく違う表情を見せてくれるのも、見どころのひとつである。


フェスの鼓動が響く、音楽のステージ

そして最大の楽しみである音楽。フィールドのあちこちに点在するステージでは、世界各地から多彩なアーティストによる多様なライブやDJセットが繰り広げられ、ジャンルを横断するラインナップがフェス全体を彩った。

音楽は単純に“聴く”だけではなく、フィールドの風景やアート、ステージ装飾と一体となって、その場の世界観を形づくっている。

太陽が沈む頃にはサンセットが空気を変え、夜になると照明によって音の印象も変化していく。複数のステージが時間帯ごとに異なる雰囲気を見せ、ステージを巡りながら思いがけず新しい音楽に出会うのも、フェスならではの楽しさのひとつだ。


こうしてフィールドを歩き、音を聴き、食べ、休み、また踊る。そうした体験を重ねるうちに、これまでに「Wonderfruit」を訪れた人たちが口を揃えて「また行きたい」と話していた理由が、自然と腑に落ちた。

音楽はもちろん、アートやウェルネス、空間づくり、運営のあり方に至るまで、すべてが分断されることなくひとつの世界として設計されている。気づけば、その世界観にすっかり惹き込まれている自分がいた。

そして帰り道には、もう次の開催のことを考えている。また来年、どんな景色に出会えるのか。そんな余韻を残しながら、フィールドを後にした。 


Wonderfruit

The Fields at Siam Country Club
50 Moo 9 T. Banglamung,​ Pong, Bang Lamung District, Chon Buri 20150
https://wonderfruit.co

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