“村に泊まる”という選択─バリ・ペレレナンで進化を続ける「FURTHER HOTEL」

2025/12/06 文・Meadow編集部

今、静かに注目を集めるホテルがバリ・ペレレナンにある。 

2023年7月に開業した「FURTHER HOTEL」は、現代的な美学とバリの豊かな文化を融合させることをテーマに、Claudio CuccuとMartine McGrathの夫婦のユニットが共同創業者であるSimon Digby、Tim Wiswellと新たに立ち上げたプロジェクト。かつて夫婦が携わっていたレストラン併設のホテル「The Slow」を手放したタイミングで、デザインも体験も、村との関わりも、すべてを“さらに先へ(Further)”進めること。その決意が名前に込められた。

開発が進み、賑わいを見せるチャングーの西、ペレレナンという小さな海辺の村に溶け込むように佇むホテルは、ローマを拠点とする建築事務所MORQとともに設計された。彼らが採用したのは、ひとつの大きな建物ではなく、水平に広がり村に散らばる“ディフューズド・ホテル(散在型ホテル)”というアプローチ。上に積み上げるのではなく、村全体に客室やパブリックスペースが点在し、滞在者は“村の中で暮らす”ような体験を味わえる。


ゲストはホテルに滞在しながら、別棟のカフェでコーヒーを飲み、併設のレストランで食事をし、ローカルのジムで運動し、村の道を歩く。ここでは、閉じた空間を提供するのではなく、島のリズムに身を委ねながら心地よく過ごせるユニークな体験を提供する。


バリの多層的なストリートカルチャーや、地域の小さな寺院の幾何学性・素材感に共鳴するようデザインされた建築は、大地のような温かさや永続性を感じさせ、バリの風景と美しく調和するテラコッタ(赤レンガ)を用いた。さらに、地域に根付くサステナビリティの意識に合わせるように、素材選びからローカル食材の採用、ローカルなクラフトマンシップの支援まで“村とともに持続する”体制を築いている。


客室は、ミニマルかつトロピカルな要素を併せ持ち、床に埋め込まれたローベッド、トラバーチンを用いたバス、外気とつながる室外シャワーなど、素材の質感と余白がもたらす空間は、ラグジュアリーながらも“村の一部”という感覚を醸成する。


館内にはフレンチスタイルのレストラン「Bar Vera」が併設し、パリのビストロの空気感をバリの食材や風土と掛け合わせたメニューで演出。海に向かって10分ほど歩けば、別棟にメルボルン式のコーヒー文化を象徴するカフェ「ST. ALi」も。朝は香ばしいコーヒーで始まり、昼は軽やかな一杯、夜はディナーへ。時間帯によって“村を渡り歩くように滞在できる”のも「FURTHER HOTEL」らしさだ。


2025年春には、新たに屋上プール&プールバー「Portion Pool & Bar」をオープンし、ホテルの世界観を大きく前進させた。テラコッタや石などの自然素材を用いた空間は、バリの空と風、そしてペレレナンの気配をそのまま取り込むように開かれている。

長方形のプールを囲むデイベッドや共有テーブルは、昼は静かなラウンジとして、夕暮れには海風を感じるバーとして表情を変える。「FURTHER HOTEL」が掲げる“村に滞在する”というコンセプトに、屋上という新しいレイヤーが加わり、水平に広がる村のリズムに空へと開かれた余白が生まれた。素材・風景・時間が交わるこの場所は、ホテルの新しいハイライトとして滞在体験を鮮やかに更新した。


暮らすように滞在するペレレナンのひととき。次にバリを訪れるときは、この“テラコッタの四角”を拠点に、村の日常に溶け込む滞在を体験してほしい。ホテルでありながら、村であり、暮らしでもあるというコンセプトは、“さらに先へ”という名の通り、今も進化を続けている。

FURTHER HOTEL

Jl. PantaiPererenan No.84, Pererenan, Kec. Mengwi, Kabupaten Badung, Bali 80351, Indonesia

https://furtherhotel.com

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