“幸せな朝”に誘われ。足を伸ばして訪れたい宿3選 

2025/12/17 文・Meadow編集部/natsuri

インテリア会社に勤務する傍ら、年間200軒以上を食べ歩くグルメ好きなnatsuri (@ntr_128) さん。natsuriさんが、旅先で出会った“記憶に残る一皿”や“とっておきのお店”をご紹介。


旅の行き先を決めるとき、「あの宿の朝を味わいたい」と思うだけで、心がふわりと動き出します。その土地ならではの恵みが並ぶテーブル、穏やかな時間に身をゆだねるひととき。朝の静けさに包まれるその時間が、旅の満足度をぐっと深めてくれます。

そんな“幸せな朝”に誘われ、富山・三重・群馬の3県から、わざわざ足を伸ばしてでも訪れたい宿をセレクトしました。


◼︎HOUSEHOLD (富山) 

富山県氷見市の港町に佇む「HOUSEHOLD(ハウスホールド)」は、海辺の古いビルを丁寧にリノベーションした1日2組限定の小さな宿です。1階はカフェ、2階はギャラリー、4階が宿泊スペースとなっており、街の暮らしと旅が自然につながるような設計となっています。

ここでは「勝手口から台所にそっとおじゃまするような感覚で街を楽しんでもらいたい」というオーナー夫婦の思いを、地元食材でつくる美味しい料理や宿の佇まいを通して触れることができます。

お部屋は、富山湾と立山連峰を望む「nami」と「yane」の2室があり、私たちは小さいお部屋「nami」に宿泊しました。トイレやシャワー、テラスなどは共用で、ベッドと洗面台だけのコンパクトな空間ですが、その簡素さがむしろ心地よく、生活感と非日常の境界が曖昧になり、まるで誰かの家に滞在しているような感覚がありました。 

朝、少し早めに起きて海沿いを散歩したあと、1階のカフェで”笹倉家の朝食”をいただきました。氷見で採れた季節野菜のせいろ蒸しや漬物、近所の豆腐屋「さがのや」のがんもどき、魚のアラ汁など、土地の恵みを生かした、滋味深くやさしい和の献立が並び、体の奥からじんわりと満たされていくのを感じました。

滞在体験をアップデートする、選べるオプションもユニーク。中でも気になったのは「お買い物ツアー」。地元のスーパーを巡りながらおすすめのローカル食材やお店を教えてもらい、氷見を“暮らすように旅する”体験を味わえるというもの。

観光地からは少し離れた場所にありますが、この街で過ごす時間そのものが旅の目的になる宿です。

HOUSEHOLD 
富山県氷見市南大町26-10
https://household-bldg.com


◼︎旅籠ヴィソン(三重) 

三重県多気町の山あいに広がる複合施設「VISON(ヴィソン) 」。山の地形を生かした東京ドーム約24個分の広大な敷地に、ホテルや約70店舗のレストラン、ショップが軒を連ねます。 

宿泊場所は複数の選択肢があり、6棟のヴィラと山の斜面に建つ155室を備えた「HOTEL VISON」、ザ・コンランショップがデザイン監修した6部屋の小さなホテル「HACIENDA VISON」、そして日本を代表するクリエイターが手掛け、1棟ごとに異なるコンセプトの「旅籠ヴィソン」から選べます。 

私たちは、「旅籠ヴィソン」のminä perhonen(ミナ ペルホネン)のコンセプトルームに宿泊しました。室内には、minä perhonenのテキスタイルがアートや家具、テーブルウェアなどにあしらわれ、木の温もりを感じる空間にやさしい色合いが溶け込み、穏やかな空気が流れていました。同じ棟には、minä perhonenのミュージアムも併設し、テキスタイルの原画やプロダクトとともに、ものづくりの背景などについて触れることができます。

滞在中は、温浴施設「本草湯」を利用できるのも嬉しさのひとつです。七十二侯をテーマにした休憩スペースを中心に水鏡の湯と光陰の湯が男女日替わりで入れ替わり、夜と朝で異なる景色を楽しめます。2024年にはサウナもオープン。薬草湯とともに心身をほぐし、深いリラクゼーションを味わえます。


朝食は、「VISON」内にあるカフェやレストラン約8店舗から好きなお店が選べるなんとも嬉しいシステム(事前予約必須)。今回は「cafe Tomiyama」のモーニングセットをいただきました。 

まるでアフタヌーンティーのようなプレートに盛り付けられたサラダと、卵・フルーツから選べるサンドイッチ。セットには自家製ミニプリンまで付き、アンティーク家具に囲まれた空間で朝の時間をゆったりと楽しめます。 


「VISON」の魅力はただ泊まるだけで終わらないところにあります。敷地内を歩き、食べ、文化に触れる体験の延長線上に、宿泊が自然と溶け込みます。朝から夜までこの場所に身をゆだねる豊かさが、滞在そのものを特別な旅の記憶に変えてくれます。

旅籠ヴィソン
三重県多気郡多気町ヴィソン672-1
https://vison-hotels.com/hatago/


 ◼︎赤城宿(群馬) 

群馬県・赤城山の麓に佇む「赤城宿」は、登録有形文化財にも指定されている、歴史ある建物を活用した宿です。関東を中心に古民家宿を手がける「るうふ」がプロデュースし、それぞれ異なるコンセプトを持つ5棟の宿が点在しています。

今回宿泊したのは「清芳山荘 本館」。大正2年頃に建てられた数寄屋造りの建物は、約198㎡という広さを誇り、贅沢に丸ごと一棟貸切で利用できます。庭園を望むリビングには、和洋の調和がとれた家具が丁寧にしつらえられ、歴史と静けさが寄り添う空間が広がっています。


浴室には、家族3人が余裕で入れるほどの大きな檜風呂とサウナが備わっています。浴室から続くウッドデッキでは露天風呂や水風呂もあり、建物の時の流れと自然が静かに溶け合う時間を楽しめます。


夕食は、群馬の新鮮な食材を使用した会席料理。出汁の旨味たっぷりのみぞれ鍋は、冷えた身体にやさしく染み渡ります。子ども向けには特製のハンバーグプレートも用意され、家族での滞在にもやさしく寄り添ってくれる内容でした。 


朝食は、せいろ蒸しの野菜を中心としたシンプルな構成。事前に準備された食材を自分たちの好きなペースでいただきます。お茶碗に白米をよそい、湯気の立つお味噌汁を配膳する。そんな何気ない所作が、旅先にいながら家で過ごす朝のような心地よさを感じさせてくれました。

赤城宿
群馬県前橋市富士見町赤城山1825
https://akagi-shuku.com

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