任天堂旧本社から小学校まで。歴史を受け継ぐリノベーションホテル3選

2026/05/20 文・Meadow編集部

歴史的建築をモダンに再生した「リノベーション宿」が、新たな旅の目的地として注目を集めている。長い年月を刻んで建築には、その土地の記憶や物語が静かに息づく。そこに現代の感性を重ねることで生まれる空間には、新築にはない奥行きと、文化に触れる豊かな時間が広がっている。

今回は、歴史と現代が響き合う、リノベーションホテル3軒を紹介する。


任天堂旧本社を継承した「丸福樓」

「丸福樓」エントランス

任天堂といえば、子どもの頃に夢中になった記憶を持つ人も多いだろう。その創業地にあたる京都・鍵屋町の旧本社が安藤忠雄の監修によって、全18室のホテル「丸福樓(まるふくろう)」として生まれ変わった。

「丸福樓」の名は、1947年に設立された任天堂の前身「株式会社丸福」に由来する。かるたや花札、トランプを手がけた当時の屋号が、そのままホテル名として受け継がれた。

ライブラリー「dNa」

到着したらまず訪れたいのがライブラリー「dNa」。ここは、任天堂創業家・山内家が手がけた空間。選び抜かれた書籍やアートを楽しみながら、任天堂の歴史や哲学に触れられる。

館内は、旧本社社屋を活かした既存棟と、新たに増築された新築棟で構成される。既存棟には、タイルや暖炉、装飾など創業当時の意匠が残り、昭和初期の面影を今に伝えている。一方新築棟は、安藤忠雄らしい静謐でミニマルな設え。やわらかな自然光が差し込み、住まうような心地よさに包まれる。

任天堂旧本社社屋を活かした既存棟

安藤忠雄らしい静謐でミニマルな設えの新築棟

さらに、かつて応接間として使われていた空間を再生したゲストラウンジとアートを眺めるダイニングラウンジ、職人が丁寧に揚げる天ぷらを楽しめる和食店「天ぷらまるふく」も併設。

花札づくりから始まり、“遊び”のかたちを更新し続けてきた任天堂。そのルーツを受け継ぐこのホテルは、好奇心を知る大人にこそ似合う。

丸福樓

京都市下京区正面通加茂川西入鍵屋町342番地
https://marufukuro.com


140年の歴史が息づく「Azumi Setoda」

Azumi Setoda

瀬戸田の地で約140年にわたり佇む邸宅「旧堀内邸」。「Azumi Setoda」は、その貴重な建築様式を現代の感性で蘇らせた。改修を手がけたのは、京都を拠点に伝統建築の美を追求する六角屋の三浦史朗。歴史への敬意を宿しながら、まるで邸宅へ招かれるような親密さを感じさせる。

全22室の客室は、50平米から70平米というゆとりある設計。一歩足を踏み入れれば、檜の心地よい香りに包まれる。各客室には坪庭が備わり、一帯に広がる自然も楽しめる。家具には檜など自然素材を用い、空間に溶け込むデザインとなっている。

ベッドルーム

向かいには、別棟として銭湯付帯の宿泊施設「yubune」が建つ。そこには、銭湯とサウナ、湯あがりラウンジ、客室14室を備え、宿泊者だけでなく、地域の人々も行き交う場として親しまれている。

別棟「yubune」

銭湯とサウナ、湯上がりラウンジを併設

「yubune」は、日帰り利用も受け入れる

食もまた、瀬戸田の風土を深く味わう体験だ。瀬戸内の海と山から届く旬の食材を軸に多様な技法で引き出すコースには、この春新たに着任したイタリアン出身のヘッドシェフ・青木一誠の感性が息づく。

また、かつて交易によってこの地にもたらされ、堀内家に受け継がれてきた器が料理と合わせて供され、この土地に積み重ねられてきた時間や記憶を伝えていく。

美しい海に囲まれた瀬戸田の風景

滞在中は、瀬戸内の自然や地域の魅力に触れるアクティビティも楽しめる。サイクリストの聖地「しまなみ海道」ツアーにはじまり、瀬戸田名産のレモン狩りやサンセットクルーズ、静寂の中で自分と向き合うお寺での座禅まで、ここならではの体験を提供する。

Azumi Setoda

広島県尾道市瀬戸田町瀬戸田269
http://azumi.co/setoda


学び舎の記憶を受け継ぐ「ザ・ホテル青龍 京都清水」

ザ・ホテル青龍 京都清水

京都を代表する観光地・清水寺へと続く坂道の途中。地域とともに歩んできた「京都市立清水小学校」の校舎が、2020年にホテルとして生まれ変わった。コンセプトは「記憶を刻み、未来へつなぐ」。既存校舎の意匠を活かしながら改修された館内には、かつての面影を残す階段や窓枠、講堂などが随所に残り、時代を超えた空気が漂う。

客室は、当時の建築美を活かした全48室。教室の面影を残すクラシカルな既存棟と、京都の意匠を現代的に表現した増築棟、2つの異なるデザインで構成される。

引き算の美学が息づく既存棟の客室

モダンな建築デザインに京都の伝統的なエレメントを加えた増築棟

館内には、階段の手すりに残る彫刻刀のいたずら書きや小学校時代の面影を感じさせる意匠も残されている。エントランスには、当時の思い出を展示するアーカイブコーナーも。

階段の手すりに残る彫刻刀のいたずら書き

当時の記憶を感じさせる階段

最上階にはルーフトップバー「K36 The Bar & Rooftop」を併設。京都の街並みを360度見渡すパノラマビューとともに、地元食材を活かした食事やカクテルを楽しめる。また別館には、パリで100年以上続く老舗ビストロ「ブノワ」も展開。フランスの伝統的なビストロ料理に旬の味わいを取り入れたメニューを提供する。

K36 The Bar & Rooftop

ブノワ京都

そのほか、京都での滞在に寄り添う宿泊者専用のゲストラウンジ、フィットネスジムやプライベートバスも完備。京都の歴史や文化に触れながら滞在を楽しめる一軒だ。

ザ・ホテル青龍 京都清水

京都府京都市東山区清水二丁目204-2
https://www.princehotels.co.jp/seiryu-kiyomizu/

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