築70年の長屋を再生した空間で「SAMAA_」が描くコーヒーの“フォースウェーブ”
2025/10/01 文・Meadow編集部
三軒茶屋にオープンしたコーヒーショップ「SAMAA_」
三軒茶屋の路地にコーヒーショップ「SAMAA_(サマア)」が誕生した。
「一杯のコーヒーが、美しい未来をつくる」をミッションに、築70年以上の長屋を再生した空間で“美味しい”と“サステナブル”を両立。
このお店を手がけるのは、「BLUE BOTTLE COFFEE(ブルーボトルコーヒー)」で10年にわたり経験を積んだ村上雄一と、インドネシア出身のエドガー・ホンゴー。環境問題に直面するバリ島での体験を通じて「美味しさとサステナビリティは共存できる」ことを確信。現地での学びをもとに新たな挑戦としてはじめたブランドだ。
人にも地球にも“いい選択”
コーヒーは、“抽出家”として活躍する藤岡響が監修。収穫量の多いロブスタ種をあえて採用し、石臼やイブリックを用いた原始的手法と超音波や減圧蒸留といった先端技術を融合させ、豆が持つ個性を余すことなく引き出した一杯を提供する。
さらに、「発酵」や「循環」をテーマに厳選したナチュラルワインや、池上のベーカリー「étéco bread(エテコブレッド)」が手掛けるベーグルやサンドイッチもラインナップ。ベーグルには、世田谷区内の製粉所で挽いた全粒粉「農林61号」を使用し、小麦粉本来の風味を生かしながら、もっちりとした重厚感ある食感を楽しめる。
コーヒーは、“抽出家”として活躍する藤岡響が監修。
池上のベーカリー「étéco bread」監修のベーグルはテイクアウトもできる
環境負荷は最小限。築70年以上の長屋を再生した“リジェネラティブ建築”
空間設計を手がけたのは、建築事務所「STUDIO DIG.(スタジオディグ)」。築70年以上の長屋を「解体」ではなく「育てる」という発想で甦らせ、環境への負荷を最小限に抑えた“リジェネラティブ建築”として再生した。
店内にはロングカウンターを設け、ゲストとスタッフ、文化や価値観が交わる“ひらかれた実験場”を創出。さらに、家具には廃材や再生プラスチックなどのアップサイクル素材を用い、空間全体で「循環」の思想を表現した。
環境負荷を最大限に抑えて再生した、築70年以上の長屋
店内には、ロングカウンターを設置し、“ひらかれた実験場”を演出
徹底してこだわり抜いた、サステナブルな取り組み
店内で生まれる副産物は資源として循環。コーヒー豆かすはストーブ用のブリケット燃料に再生し、生ごみはコンポスト化して近隣の農地や公共施設へ。
ユニフォームには古着を採用し、トイレには徳島発のファブリックブランド「KINOF(キノフ)」による間伐材由来のタオルを設置することで、ペーパータオルによる使い捨てを削減した。
そのほか、販売用のコーヒー豆には水平リサイクルが可能なアルミ缶を使用するなど、英国の「Food Made Good Standard」をベースに、建築・メニュー・素材のすべてにおいてサステナビリティを徹底した。
今後はバリ島やジャカルタへの展開も計画中。美味しさとサステナビリティを両立させながら、コーヒーの“フォースウェーブ(第四の波)”として新しい価値観を発信していく。
三軒茶屋に佇む長屋を再生した「SAMAA_」