【EDITOR’S PICK:HOTEL】約100年の記憶を受け継ぐ、浜名湖の一棟貸しホテル「清風荘」

2025/10/09 文・Meadow編集部

「清風荘」エントランス

Meadow編集部が出会った、とっておきの一軒を紹介する「EDITOR’S PICK:HOTEL」。

今回訪れたのは、静岡・浜名湖のほとりで静かに佇む一棟貸しホテル「清風荘」。約100年前に宿舎として建てられた「清風荘」は、林間学校や合宿の受け皿として世代を超えて受け継がれてきた。やがて老朽化により閉館し、時が止まっていたその建物に、いま新たな息吹が宿っている。


静岡県西部に広がる浜名湖は、太平洋とつながる希少な汽水湖。湖ならではの静けさと海の力強さを併せ持つこのエリアは、かつて東海道の宿場町として人と文化が行き交った場所でもある。湖面から続く水路、どこか懐かしい街並み、潮の香りを運ぶ風。周辺にはサーフスポットや海水浴場も点在し、日常の延長にありながら、旅の高揚感を呼び覚ます。

浜名湖は、海とつながる希少な汽水湖。この一帯は、湖の静けさと海の力強さを併せ持つ

ノスタルジックな雰囲気漂う街並み

周辺にはサーフスポットも


現代に蘇る、かつての面影

浜名湖の最南端に位置する「清風荘」では、遊休資産として眠っていた6棟の建物と1棟の体育館がひとつの街のように広がる。その再生プロジェクト第一弾として、湖を目の前に望む2号館が完成した。

天井に浮かぶイサム・ノグチの照明と巨大なソファが存在感を放つリビング

扉を開ければ、吹き抜けの開放感に包まれる。大きなソファを配したリビングと古民家の土間を思わせるダイニング。窓の先には、まるでプライベートビーチのように広がる湖が目に入る。

廊下の先には、昔懐かしい銭湯のようなサウナ付きの大浴場。大人5人でも余裕で入れるスペースは、林間学校で入った思い出のお風呂のように、仲間と語らう時間を設計した。湖を望む湯に身を沈めれば、懐かしい風景と現代の感覚がそっと重なり合う。

湖を望む大浴場

大浴場に併設したサウナ

階段の上には、浜名湖の名所から名付けた「IMAGIRE」「BENTEN」「TAIHEIYO」の3つのベッドルームが並ぶ。最大15名を迎える広々した空間は、宿舎の面影を残しながらも、現代的な快適さを纏っている。

リネンには、 “寝装具の価値の再構築”を掲げる寝装具ブランド「sinso」を採用


炭の香りに包まれながら、地元の恵みに舌鼓。

海とつながる汽水湖・浜名湖は、うなぎや牡蠣、しらすなど、海の恵みにあふれている。
素材の魅力をできるだけシンプルに味わってほしいと用意された食事は、囲炉裏を使った原始焼きのスタイルで。炭火で香ばしく焼いたうなぎ、新鮮な牡蠣、土鍋で炊き上げた地元の米など、囲炉裏を囲みながら頬張る一口ごとに、この土地の豊かさが染み渡る。

ダイニング中央に据えられた囲炉裏

調理法は、素材の持ち味を生かした原始焼き

土鍋で炊き上げた地元米

「清風荘」は宿でありながら、街の未来を育む場所。人が訪れ、交流が生まれ、やがて街が育っていく。続く6棟の展開にも注目したい。


清風荘

静岡県湖西市新居町新居3288-105
https://seifuso.jp

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